冷たい指先

「おはようー起きなよー」
 いつものとおりレイを起こしに行った私は、彼の頬っぺたをぴたぴたと叩いた。
 その瞬間、レイが私の手をがしっとつかむ。
「うおっ!?」
 その勢いにびっくりして思わず変な声を上げてしまったのはご愛嬌。
「李、手が冷たい」
「冷え性なんだよー」
 最近レイが正しい発音で私の名前を呼んでくれるのがなんだか嬉しい。
 ここらあたりは過ごしやすい気候で、日本で言うなら、蒸し蒸ししてない梅雨時から秋の寒い日ぐらい、の振れ幅で気温が変化している。しかしここ二三日はちょこっと冷え込んでいるのだ。さすがに雪が降るようなことはないけど。
 ぐいっと腕が引かれたかと思うと、視界が反転した。足の先にぬくい感触がする。
「ん、やっぱり足も冷たいな」
「ちょっと!」
 ぎゃーやめてええええ。前触れなしにベッドに引きずりこまないでええええ。
 思わず思考が混乱してしまった。顔が近いんだよ顔が!
 どうもあっためようとしてくれているらしい。お、お気遣いなく、と思いながらも、あったかくなったらだんだん眠くなってきてしまった。ベッドがあんまり柔らかいのがまた眠りを誘う。
 うっかりぐっすりと寝入ってしまった私が目を覚ますと、レイはすでにいなかった。


「君の名前2」へ
back/ novel