娘の利用価値

 前々から訊いてみたくてちょっぴり怖くて訊けなかったことをソルトに訊いてみた。
「……娘さんをさらってくる風習があったって聞いたけど」
 ソルトは、「あー」と妙な声で応じる。
「まさか殺しちゃったりとかしたわけじゃないんだよね?」
 そんなことを考える自分が嫌だ。でも、いまだに魔人の感覚ってよくわかんないし。昔は今と違ってたのかもしれないし、戦争だってしてた。
「それどころか三年で返品されたぞ。十年に一回ぐらいかな、思い出したように若い娘がさらわれるんだよな。今はもうないけど」
「それってどういう事情でさらってたんでしょうか」
 聞かない方がいいのかなこれ、と思いながらやっぱり気になる。
「あー、おれも気になってたからリキに訊いてみたんだよな。そしたらその答えが」
「こ、答えが」
「観賞用」
「……は?」
 目が点になるとはこのことでしょうか。
「なんか、魔人って姿が変わらないらしいから」
 彼らは変わらない姿のまま、何百年も生き続けることができる。いまはもうしてないけど、それをしていた頃は、数年、数十年単位で見た目が変わってしまう人間が非常に興味深かったらしい。特に若い娘さんの思春期の三年間ってすごい変わっちゃうから面白いなーとかそういう感覚だった……そうです。
 なんだそれ。
「おれは、スモモもそのたぐいかと思ってた」
「む、なんと失礼な。私はもう成長期終わってるよー」
 そう言うと、ソルトは驚いた顔をして私の歳を尋ねた。
「ソルトとおんなじぐらいじゃない? 二十歳だもんハタチー」
 この世界で自分の年齢をカミングアウトするときほど楽しいことはないな!


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