歩み寄り

 ソルトと知り合ってから、私は良く外に遊びに行くようになった。
 彼はこの城で庭師として働いている。ここの庭園は――当たり前だけど――ここら辺りで一番豪華な庭なので興味があって職を求めに来たらしい。
「へえー」ふんふんと興味深げに話を聞いていると、
「っていうか、そんな頻繁に会いに来なくていいから。むしろ来んな」
 辛辣なお言葉を頂いた。
「ええー、ひどーい! いいじゃん別にー」
 無理やりかわいこぶってみたら、非常に苦い顔をされた。いや、紛れもなく嫌がらせでやったんだけど。
「ひどいとか言うならもれなく魔人を引き連れて来んな。マジ、びびるから!」
 おおっと本音が出た。今日はまだ一人だが、別に私がわざわざ連れてくるのではなく、どこからともなく嗅ぎ付けてきたシュラやリキが寄ってくるのだ。さすがにレイは、そこまで暇ではないらしい。
 なにやら、ソルトに対抗意識を持っているらしいのだ。割ときちんとした言葉遣いもできる私が、ソルトに対しては結構くだけた態度で打ち解けているのが気に入らないらしい。
 だってしょうがないじゃん! やっと見つけた同年代なのに!
 単に私は、新しくできた友達に入れ込んでいるだけなのだが。だって、レイたちは『友達』という言葉で片付けるには、ちょっと違う関係だと思うし。
「でも、ちょっと慣れたでしょ?」
 魔人に、というニュアンスで私は答えを促す。
「……まあな」
 ソルトは不本意そうに頷いた。
 シュラとはまだどことなく険悪な雰囲気なのだが、リキとはまあまあ打ち解けているらしい。
 レイとも会わせてやろうと画策し、その後私のそのもくろみは成功することになる。
 こうやって、魔人と人間とがもうちょっと仲良くなったらいいのにな。


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