ソルト

「うわー、お城に若い子がいるー!」
 思わず指差すと、指の先にいた青年はこちらを見て目を丸くした。
「……それは……こっちの台詞……」
「そう?」私は首を傾げた。
 いつもはお城の上の階にいる私だが、今日は外に出たくなったので庭園を散策していたのだ。
 なんというかこのお城、本当に若い子が少ない――魔人は年齢不詳なので除く。特に、女の人を見かけない。侍女がいても壮年の人で、若い女の子! という感じの人がいないのだ。
 男の人もあまり若い人を見かけないのが、この青年は見たところ二十歳ぐらいだったので興味を持ったということなのだが。名を尋ねると、ソルトと名乗った。
「なにおまえ、さらわれてきたとか?」
「ううん、自由意志」
 め、珍しい、とソルトは眉間を指で揉んだ。あ、そういえば、娘をさらうとか割と最近までの話だったんだっけ。さらってくる理由は深く考えないようにしている。
「この辺って、なんで若い人少ないの? 特に女の子」
「本当にわからないのか?」
「……わからないから訊いてるんだけど」
「冗談じゃなくてか」
「しつこい」
 むっとして軽く私が睨むと、彼は溜息を吐いた。
「……まあ、あのな、普通の神経持った奴なら、娘を魔人の巣窟に送り込もうとか考えないの。扶養家族が多くてよっぽど金に困ってるとか、特別な事情がないとこんなとこで働かないの。だいたい、この地域、潤ってるから仕事には困らないんだよ。わかった?」
「……わかりました」
 うわー、納得。


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