のんびりまったりの空間。
side Luli
帰りしな、葛見くんに声をかけられた。一緒に帰ろうと言われてうんと答え、お茶でも飲もうと言われてうんと答えた。
それで、いま私の目の前に葛見くんが座っている。
変な感じ。
私と葛見くんの目線の高さの違いとか、周りが静かなこととか、私がケーキを食べていることとか。なんだかいろいろと変な感じ。
葛見くんは少し眼を伏せている。あ、意外と睫毛が長い、と思った。葛見くんの前にはコーヒーカップが置いてあって、彼は私の食べているケーキのお皿の縁を見つめている。
「くずみくん」
呼んでみると、葛見くんは顔を上げた。目が合って、ぱちっと瞬きをする。
「ひとくち、食べる?」
「え」
私は少し大きめの一口大に切ったケーキをフォークに刺して、葛見くんの目の前に差し出した。
「瑠璃」
私の名を呼んで、葛見くんはなんだか困ったような顔をした。躊躇しているみたいだ。いつもクールな彼なのに。葛見くんの注文はコーヒーだけで、ケーキを食べるのは女の子みたいで恰好悪いと思っているのかもしれない。
結局、葛見くんはケーキをぱくっと食べた。
一瞬だったけど、ものすごく美味しいという顔をした。実は甘党だったみたいだ。
私はふふと笑った。
なんだか可愛い。