そんなところも好きだけど。

彼の事情1

 ゆきちゃんは甘え上手だ。そのくせ、率直な物言いで好戦的になったりもする。毎回振り回されてしまうが、そのギャップが堪らなく好きだ。
 ティータイム中にぼけっと考えていると、ゆきちゃんに怒られた。
「ちょっと、一の字。聞いてるの?」
「ねえ、ゆきちゃん。そろそろ菊一って呼んでもいいんじゃない?」
「……うーん。そっちも呼んでくれるならいいけど」
「ほんと?」
 僕は目を輝かせた。お互い呼び捨て。これぞ彼氏彼女。いや、婚約者。
「やっぱりやだ。あんたに呼ばせるなんて勿体無い」
 ゆきちゃんはすっぱり言い捨てた。まったく、容赦がない。


 しょうがない。惚れたが負けだ。


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novel

2005 11 07