まもってくれたこと。
side Katsuki
むかしは泣き虫だった。
幼い頃に両親を亡くした俺は、伯父さんの家に引き取られた。居心地は悪くなかったが、独身で仕事の忙しい伯父さんはあまり家にいることがなかった。
だから俺は隣の想の小母さんに育てられたと言っても過言ではない。帰るのは想の家で、ご飯を食べるのも想の家だった。さすがに寝るときには家に帰ったが。
ちっぽけで細っこかった俺は、いわゆるガキ大将によくいじめられていた。そんなとき助けてくれたのは、母親の代わりに慰めてくれたのはいつも想だった。
そんなある日、俺は気づく。
ガキ大将も子供だったから、想に対しても容赦ない。だから想は、本当は怖かったのだ。
俺のために想を犠牲にすることなんてできない。
だから俺は、自分で強くなることにした。想を護るために道場に通い、むやみに暴力を奮う事態にならないために討論の腕も磨いた。勉強で馬鹿にされないために勉学にも励んだ。
そしていつの間にか俺は、想に頼らなければならないことなんてなくなってしまった。
想に依存していた俺が、今度は想に依存されている。
いつかはちゃんと、想を自立させてやろうと思った。そのために想が俺を必要としなくなっても構わない。
俺は想に感謝しきれないほど感謝しているのだ。守ってくれたことに。寂しがる俺が想にベッタリでも、嫌な顔ひとつせず友達との約束をキャンセルしてでも辛抱強く付き合ってくれたことに。俺の身体ではなく、俺の心を守ってくれたことに。
だから想が幸せであればそれでいい。
そう俺は誓ったのだ。
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